• ■ 体重管理への想い
• 体重は、健康を映す “ものさし” です。
  
  私たちは、動物さん達が軽やかに、いきいきと過ごす日々を守るために、「太らせないため」ではなく、「健康を見守るための体重管理」 を大切にしています。
  
  少しの体重増減にも意味があり、それは身体からのメッセージです。
  その変化を見逃さず、飼い主様と一緒に健康を守ることが、私たちの使命だと考えています。

なぜ体重管理が大切なのか

• 体重の変化は、体の中で起きているあらゆる変化を映し出す“バロメーター”です。
  食事内容、運動量、ホルモンバランス、筋肉量、内臓疾患など、多くの要素が体重に影響します。


• 体重が適正範囲から外れると、
• ・関節
• ・心臓
• ・呼吸器
• ・代謝
• へ負担がかかり、病気のリスクが高まります。


• 理想体重 × BCS（体型評価）
  この2つを一緒に見ることが、健康を守る第一歩です。

理想の体重を知る ― BCS（体型スコア）

• 当院では、触診と視診を組み合わせた BCS（5段階評価）を使い、
  「見た目は普通に見えるけれど、実は少し太り気味」
  「数字は同じなのに、筋肉が落ちている」
  といった状態も見逃さないようにしています。

カロリー計算（RER・DER）

• ● RER（安静時エネルギー要求量）
• 生きるために必要な最低限のエネルギー。
  RER = 70 × 体重(kg)^0.75
  ＊RER = 30×体重(kg)+70時[簡易的計算]
• ● DER（1日の必要エネルギー量）
• 生活スタイルに合わせ、RERに係数をかけて計算します。


• 状態 係数 コメント
  成犬・成猫 1.6 標準活動
  避妊・去勢済 1.2〜1.4 やや低代謝
  成長期 2〜3 発育に必要
  シニア 1.1〜1.4 筋肉維持が重要
  減量 0.8〜1.0 ゆっくり落とす


• 例：5kg・避妊済
  → RER 234 × 1.3 ＝ 300 kcal/日

今のフードでの“給与量の求め方”

• フードの袋に「○kcal / 100g」と記載されています。


• 給与量（g）＝（1日の必要カロリー ÷ kcal/100g）× 100


• 例：必要 300 kcal、フード 350 kcal/100g
  →(300÷350) ×100 = 86g / 日

体重管理における具体的な対策

• 当院の健康診断では、検査結果をもとに“いま必要な体重管理の方向性”をわかりやすくご提案します。
  体重コントロールは 「食事」「運動」「モニタリング」 の3つをセットで行うことが成功の鍵です。


• 1. 食事の調整：減量食にする？現行フードを減らす？


• 体重管理では、まず 総摂取カロリーのコントロール が最優先です。
  当院では以下の3パターンから、その子に最も合う方法をご提案します。


• A：減量用フードへ切り替える（推奨）
• 体重を10%以上減らしたい
• ・現フードを減らすと空腹ストレスが強い
  ・食物繊維が不足して満腹感が得られない
  ・シニアで筋肉を維持したい
• ・膝・心臓・糖尿病など疾患がある


• → 食べながら痩せられる設計のフードが有効


• B：現在のフードを減らす（軽度の体重超過の場合）
• 体重増加が軽度（+5〜8%）
• ・おやつが多い
  ・フードのカロリーが高くない
  ・現在のフードが体質に合っている


• → 量を10〜20%減らして1〜2週間様子見


• C：おやつの見直し
• おやつは総カロリーの 10％以内に。
• ・高カロリーのガム・ジャーキー類は減らし、野菜スティック（茹でたブロッコリー・キャベツ等）や低カロリーおやつに切り替えます。



• 2. 運動量の調整


• 運動は「消費カロリー」よりも ストレス軽減と代謝UP を目的に行うと成功します。
• ● 犬
• ・1日 20〜40分の散歩を目安に
  ・少し速歩きにして呼吸が軽く弾む程度
  ・若い／小型犬は追いかけっこや知育トイで室内運動もOK
• ● 猫
• ・1日 合計10〜15分のインターバル遊び
  ・レーザーポインター・じゃらし・上下運動のできるキャットタワーが効果的
  ・「食べる場所を分散して動かす」知育フィーダーもおすすめ



• 3. 定期モニタリング（成功のカギ）


• 体重管理は “見える化” が最強の味方です。
  ・月1〜2回：体重測定（目標：月1〜2％減）
  ・3〜6ヶ月ごと：BCS（ボディコンディションスコア）評価
  ・血液検査で肝臓値・中性脂肪・甲状腺の確認
  ・療法食の場合：定期的な給与量の再計算

体重管理の実践ポイント

• ■ 食事
• フードは毎回グラムで計量
  ・おやつは1日のカロリーの10%以内
  ・食事時間の固定
  ・テーブルフード(人の食事)禁止
• ■ 運動
• いつもの散歩＋10〜20%
  ・猫は上下運動・おもちゃで遊ぶ
  ・シニアはゆっくり長めに
• ■ 習慣
• 成犬・成猫：月1回測定
  ・ダイエット中：週1回
  ・成長期：週1回

ダイエットの目標

• 1週間で体重の1〜2% の減少が理想。
  例：10kg → 0.1〜0.2kg/週
• 早すぎると
  ・筋肉量減少
  ・リバウンド
  ・内臓負担
  につながります。

当院の体重管理サポート（流れ）

1. 体重・BCS測定
2. 生活環境（食事・おやつ・運動）の聞き取り
3. カロリー計算（RER・DER）と給与量の決定
4. 必要に応じてフード提案
5. 月1回〜週1回のフォローアップ

よくあるご質問

• Q1. フード袋の量と病院で言われた量が違うのは？


• A. 袋は“平均値”。その子の体質・生活で必要量は変わるためです。


• Q2. ダイエットフードに変えても痩せません。どうして？


• A. 原因は摂取カロリーが消費カロリーを上回っていること。大切なのは“適正量”。食べすぎていれば痩せません。また筋肉量も含めれば個体差がかなりあります。


• Q3. おやつはあげていい？


• A. 1日の10%以内ならOK。フードから差し引くと安心。


• Q4. 食欲があるのに痩せてきた


• A. 甲状腺、糖尿病、腫瘍などの可能性あり。早めに受診を。


• Q5. 週にどのくらい体重は落としてもいい？


• A. 週1〜2%が安全。急な減少はリバウンド原因になります。


• Q6. 体重を上手く測れません。コツはありますか？


• A. 飼い主様が動物を抱っこして体重を測った後飼い主様の体重を差し引いて下さい。それでも測れない場合は院内の体重計をご利用ください。測定だけの来院も歓迎です。


• Q7. 子犬・子猫にも体重管理は必要？


• A. はい。「増え方」を見ることが発育評価になります。